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トレントを使用して開示請求を受けたらどうなるか?|具体的事例の紹介

当事務所では、2021年頃から、BitTorrent(ビットトレント)qBittorrent、µTorrentなどのファイル共有ソフトを利用してトレントファイルをダウンロードした方から、次のようなお問い合わせを多く受けています。

「BitTorrent(ビットトレント)を利用してトレントファイルをダウンロードしていたら、プロバイダから発信者情報開示に係る意見照会書が届いた。どう対応したら良いか?」

当事務所では、このようなご相談について、数多く対応してきました。

この記事では、その対応経験を踏まえ、トレントを使用して開示請求を受けてしまった場合にどうなる可能性があるのか、その実例をご紹介します。

トレントを利用して開示請求を受けた実例|アダルトビデオ制作会社からの請求

トレントの使用に関しては、アダルトビデオ制作会社から開示請求を受ける事例が増加しています。

開示請求の根拠としては、著作権(公衆送信権)の侵害や、パブリシティ権侵害、肖像権侵害が挙げられることが多い印象です。

ケース①|著作権侵害(公衆送信権侵害)

代表的なのは、著作権侵害を理由に開示請求を受ける事例です。

突然、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。内容を確認すると、私がビットトレントを利用して違法に作品をアップロードして、著作権(公衆送信権など)を侵害したと書いてある。ダウンロードした記憶はあるものの、アップロードしたことはないと思う。どう対応したら良いか。

当事務所では、このようにトレントを利用した著作権侵害を理由として開示請求を受けた方からのご相談を多く受けています。

開示請求を行う権利者としてのアダルトビデオ制作会社として多いのは、次のような会社です。

  1. 1. ケイ・エム・プロデュース
  2. 2. WILL
  3. 3. プレステージ
  4. 4. CONT
  5. 5. EXstudio

このような会社から著作権侵害(公衆送信権侵害)を理由に開示請求された場合、基本的には開示に同意し、早期に和解ができるように試みることが望ましいと考えます。

この場合の具体的な対応方法は、当事務所の記事「ファイル共有ソフトを利用して発信者情報開示請求を受けたら」もご確認ください。

当事務所で対応を行ったケースでは、基本的には個別作品に関して30万円程度の和解金を支払うか、同じ著作権者が保有する全作品に関して80万円程度の和解金を支払うことで、解決しています。

本記事執筆時点まで、刑事責任を追及されるに至った事例はありません。

※ 当事務所での対応を開始した当初は20万円程度または50万円程度を提示されることが多かったのですが、現在では上記金額を提示されることが一般的となっています。もっとも、アダルトビデオ制作会社によっては、上記以上の高額の賠償金を提示してくる事例もあります。そのような事例では、和解交渉を拒絶することも考えて良いでしょう。

ケース②|パブリシティ権侵害

次に、これもアダルトビデオ制作会社から開示請求を受けた事例ですが、意見照会書に記載されている被侵害権利が異なる事例です。

突然、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。内容を確認すると、私がビットトレントを利用して違法に作品をアップロードして、パブリシティ権を侵害したと書いてある。ダウンロードした記憶はあるものの、アップロードしたことはないと思う。どう対応したら良いか。

注意していただきたいのは、パブリシティ権侵害を理由に開示請求を受けた場合には、著作権侵害を理由に発信者情報開示に係る意見照会書が届いたケースとは異なる方針で対応した方が良いということです。

具体的な対応方法については、当事務所の記事「パブリシティ権侵害を理由とする発信者情報開示請求や損害賠償請求をされたら」をご参照ください。

パブリシティ権に関する過去の裁判例(最高裁平成24年2月2日判決など)を踏まえて対応方針を検討することが必要です。

当事務所では、過去の裁判例等を踏まえて対応したことにより、意見照会書に対する回答書送付後、特段の責任追及を受けていない実績を数多く有しています。

ケース③|肖像権侵害

続いて、これもアダルトビデオ制作会社から開示請求を受けた事例ですが、意見照会書に記載されている被侵害権利が著作権ともパブリシティ権とも異なる事例です。

突然、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。内容を確認すると、私がビットトレントを利用して違法に作品をアップロードして、肖像権を侵害したと書いてある。ダウンロードした記憶はあるものの、アップロードしたことはないと思う。どう対応したら良いか。

肖像権侵害を理由に開示請求を受けた場合にも、著作権侵害を理由に意見照会書が届いたケースとは異なる方針で対応した方が良いでしょう。

パブリシティ権と同じく、肖像権に関する過去の裁判例や学説等を踏まえて対応方針を検討することが必要です。

当事務所では、過去の裁判例等を踏まえて対応したことにより、意見照会書に対する回答書送付後、特段の責任追及を受けていない実績を数多く有しています。

トレントを利用して開示請求を受けた実例|音楽制作会社からの開示請求

トレントの使用に関しては、アダルトビデオ制作会社だけでなく、音楽制作会社などから開示請求が届く事例もあります。

突然、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。内容を確認すると、私がビットトレントを利用して違法に音楽作品をアップロードして、著作権を侵害したと書いてある。複数の会社の音楽作品が対象とされている。どう対応したら良いか。

当事務所の経験上は、このような事例の場合、アダルトビデオ制作会社から開示請求を受けた事例よりも低い金額の和解金を支払うことで解決できることが多い印象です。

なお、一般社団法人レコード協会が2023年2月20日に出したプレスリリースには、次の記載があります。

当協会会員レコード会社は、発信者情報開示請求によってインターネットサービスプロバイダから任意に開示された25のIPアドレスの発信者情報に基づき、代理人弁護士を通じて違法アップローダーとの間で「今後著作権侵害をしない旨の誓約」および「損害賠償金の支払い」に関する協議を随時進めており、本日までに19名のアップローダーと合意(損害賠償金の平均金額は約40万円)しています。本件訴訟により情報が開示された違法アップローダーに対しても速やかに損害賠償請求等を行う予定です。

一般社団法人レコード協会|発信者情報開示請求訴訟において
違法アップローダーの氏名等の開示を命じる判決下る

トレントを利用して開示請求を受けた実例|複数作品に関する事例

トレントの利用に関しては、複数の作品に関して開示請求を受ける事例もあります。

突然、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。内容を確認すると、私がビットトレントを利用して違法に作品をアップロードして、著作権を侵害したと書いてあった。身に覚えもあったので、情報開示に同意して回答書を送付したが、その後に追加で別作品に関する意見照会書が届いた。

複数作品に関して開示請求を受けるケースは、さらに次の2つに分類できます。

  • 複数作品が、同一の権利者の作品であるケース
  • 複数作品が、それぞれ別の権利者の作品であるケース

前者のケースでは、同一の権利者との間で複数作品に関する包括的な和解が成立するように試みるのが良いでしょう。

他方で、後者のケースでは、権利者が異なるため、複数作品に関して包括的な和解を成立させることは基本的に不可能です。そのため、個々の権利者との間で、個別の作品に関する和解が成立するように交渉を進めていくことになります。

もっとも、後者のケースであっても、権利者側の代理人が共通しているなどの理由で、異なる権利者との間で包括的な和解を成立させられる可能性もあります。

最後に

この記事では、「トレントを使用して開示請求を受けたらどうなるか?|具体的事例の紹介」と題し、当事務所での対応経験を踏まえ、トレントを使用して開示請求を受けてしまった場合の実例を、いくつかご紹介しました。

この記事が、トレントの使用に関して開示請求を受けてしまった方の参考になることを願っています。

なお、当事務所では、100件以上の意見照会書に対応してきた実績がありますので、当事務所への相談をご希望の方は、当事務所のお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

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