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ファイル共有ソフトを利用して発信者情報開示請求を受けたら

近時、BitTorrent(ビットトレント)やShare、PerfectDarkなどのファイル共有ソフトの利用者に関し、発信者情報開示請求がなされる例が増えています。

当事務所でも、このようなBitTorrent(ビットトレント)を含むファイル共有ソフトの利用者の方から「『発信者情報開示に係る意見照会書』が届いたので対応を相談したい。」といったご相談を受けることが増えています。

このような「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いてしまった利用者の方は、対応方針を決定する上で、本記事を参考にしていただけますと幸いです。

これまでに、当事務所で回答書作成等の対応業務を行った「発信者情報開示に係る意見照会書」の数は、100件を超えているところ、このような対応業務の経験を踏まえて有益と考えた情報を掲載しておりますが、もし本記事の中に不明な点などがありましたら、お気軽に当事務所宛にご連絡いただければ幸いです。

なお、本記事では、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用によって著作権法上の権利(公衆送信権や複製権など)を侵害してしまった可能性のあるケースを中心にご説明しておりますが、当事務所では、肖像権パブリシティ権を侵害してしまった可能性のあるケースについても、多くのご相談をいただいております。このような権利を侵害してしまった可能性のある方も、お気軽にご相談ください。

※ 発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合の一般的な対応方法については「発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合に開示を拒否して良いか」もご参照ください。

ファイル共有ソフトの利用と著作権侵害

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトが注目されるようになってしばらく経ちます。

こうしたファイル共有ソフトは、共有ファイルを手軽にダウンロードできるツールとして現在も多くの方に利用されています。

しかし、このようなBitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用することには、他人の著作権を侵害してしまう危険性が伴います。

具体的には、著作権法上の「公衆送信権」「送信可能化権」などの侵害です。

これらの権利は、著作物を送信したり、送信可能な状態に置いたりする権利を意味します(文化庁「著作者の権利の内容について」)。

これらは、本来、著作権者が専有する権利です。

したがって、他人の著作物を勝手にインターネット上にアップロードすると、これらの権利を侵害することになります。

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

著作権法第23条

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用している方の中には、次のように考えている方もいらっしゃるかもしれません。

「自分はファイルをアップロードしているわけではなくてダウンロードしているだけだから問題ない。」

しかし、P2P方式のファイル共有ソフトでは、ダウンロードのスピードを上げるために、利用者がとあるファイルをダウンロードする際に、同時に、自分の入手しているファイルの断片を(他の利用者のために)アップロードするという仕組みがとられることがあります。

この仕組みにより、ファイルをダウンロードしている際に同時にファイルをアップロードしてしまっているという状況が生じてしまいます。

その結果、ファイルダウンロードに伴って上記の「公衆送信権」及び「送信可能化権」を侵害することになります。

※ なお、近年の著作権法改正により、ファイルのダウンロード自体が著作権侵害を構成する可能性もあるので、その点も併せてご注意ください。

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用と損害賠償請求

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用が著作権侵害を構成する場合、著作権者には損害賠償を請求する権利が認められます。

そして、この損害賠償に関しては、著作権法上、次の規定が重要です。

著作権者等が…自己の著作権…を侵害した者に対し…損害の賠償を請求する場合において、その者が…公衆送信(…送信可能化を含む。)を行つたときは…その公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物…の複製物…の数量…に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物…の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を…著作権者等が受けた損害の額とすることができる。

著作権法第114条第1項

簡単に説明すると、損害額は、「アップロードされた著作物がダウンロードされた回数」に「単位数量当たりの利益」を乗じた金額と推定されることになります。

特に人気のコンテンツのファイルをアップロードしてしまった場合には、そのファイルがダウンロードされる回数も多くなるため、相当な金額が損害額として推定されることになりかねません。

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用と刑罰/逮捕

このように、著作権を侵害した場合には、損害賠償責任を負う可能性がありますが、それだけでなく、刑事処分を受けてしまう可能性もあります。

著作権法上は、最大で10年の懲役刑を科される可能性があり(著作権法第119条第1項)、実際に著作権侵害を理由に逮捕等されているケースもあります。

まず、BitTorrent(ビットトレント)を利用してアニメの動画を公開した人が逮捕された実例(日本経済新聞「アニメ動画を違法公開 容疑の男逮捕 被害18億円」)があります。

また、講談社の作品等を無断アップロードしていた疑いで送検された実例(講談社「海賊版関連サイト摘発についてのご報告」)もあります。

このような状況下では、逮捕はされないだろうと甘く考えるのは危険です。

発信者情報開示請求とファイル共有ソフト

上記のような損害賠償請求の可能性や、逮捕・刑事処分の可能性を踏まえ、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用者は、発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまった場合に、どのように対応すべきでしょうか。

発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまった場合、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトで発信者情報開示請求を受けた方が取りうる選択肢として考えられるものは、次の3つです。

  1. 1. 無視する。
  2. 2. 拒否する。
  3. 3. 同意する。

「発信者情報開示に係る意見照会書」への回答1「無視する」

まず、「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いても何ら回答をせず、無視するということが考えられますが、これは適切な対応ではありません。

「発信者情報開示に係る意見照会書」は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます。)に基づくものです。

プロバイダは、権利を侵害されたと主張する人から発信者情報開示請求を受けたら、一定の情報により特定される「発信者」に対し、発信者情報開示に係る意見照会書を送付して、当該「発信者」の意見を確認します。

そして、プロバイダは、「発信者情報開示に係る意見照会書」によって得られた回答を参考にしつつ、問題とされる通信による権利侵害の明白性等を検討した上、発信者情報の開示を行うかどうかを判断します。

ここで注意しなければならないのは、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が公表している「発信者情報開示関係ガイドライン」の記載です。

こちらのガイドラインでは、プロバイダが発信者に意見照会を行った後一定期間(2週間)経過しても発信者から回答がない場合には、「発信者はこの点に関して特段の主張は行わないものとして扱う」ものとされています。

これによれば、発信者情報開示に係る意見照会書に対して何らの回答もせず、これを無視した場合、主張したいことなどがあったとしても、それが考慮されないまま、プロバイダの判断により、発信者情報の開示が行われてしまう可能性があります。

したがって、主張したいことなどがある場合には、「無視する」という選択をするのは適切ではありません。

「発信者情報開示に係る意見照会書」への回答2「拒否する」

上記のとおり、権利侵害の明白性がないなど、主張すべき事情がある場合には、決して無視せず、プロバイダに対し、当該事情を適切に主張することが必要です。

証拠資料等がある場合には、それらも添付しましょう。

なお、拒否する場合には、法的に適切な事項を適切な構成で主張することが必要になります。適切な主張を行うことによってプロバイダから開示請求者に対する発信者情報の開示を阻止できる可能性があります。

法的に適切な主張をできているか不安な方は、一度弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

「発信者情報開示に係る意見照会書」への回答3「同意する」

発信者情報開示請求者からの権利侵害の主張に対し、特段の反論がない場合には、同意する旨を回答することを考えてよいでしょう。

もっとも、ここで注意しなければならないのは、特段の反論の余地がなく、発信者情報の開示が認められる場合には、権利者から損害賠償請求を受ける可能性や、権利者が刑事告訴を行う可能性があるということです。

損害賠償請求や刑事告訴の可能性がある以上、発信者情報の開示に同意する場合には、損害賠償請求や告訴がされた場合の対応も見据えて、弁護士に依頼し、発信者情報開示請求者に対する謝罪や示談を行っていくことを考える必要があります。

早期に弁護士を介入させて謝罪や示談を行えば、損害賠償請求訴訟を提起されることを防いだり、賠償金額を抑えたり、刑事処罰を避けることが期待できます。

なお、最近では株式会社クロスワープのP2P FINDERを利用した請求が増加しています(一般社団法人 テレコムサービス協会「P2Pファイル交換ソフトによる権利侵害情報の流通に関する検知システムの認定について」参照。)。このシステムが利用されている場合には、プロバイダの判断によって発信者情報が開示される可能性が高いと考えられます。

※ P2P FINDERについては「「P2P FINDER」とは何のシステムか?」もご参照ください。

また、P2P FINDERではなく、「BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)」なるシステムを利用した請求も増加しています。この「BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)」の正確性については、当事務所としては、疑義を挟む余地もあると考えていましたが、この点については、後述の「BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)」の項目もご確認ください。

発信者情報開示に係る意見照会書への回答後の流れ

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用して発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまい、上記のような「拒否」や「同意」の回答を行った場合、その後の流れはどうなるのでしょうか。

拒否した場合

発信者情報の開示を拒否した場合には、プロバイダにおいて、開示請求者に対し、任意に発信者情報を開示するか、それとも発信者情報の開示を拒絶するかを検討することになります。

この検討の結果、プロバイダが開示請求者に対して任意に発信者情報を開示すると、次は、開示請求者から、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用した発信者に対し、損害賠償請求その他の責任の追及が行われる可能性があります。

これに対し、プロバイダが発信者情報の開示を拒絶した場合には、開示請求者がなお発信者情報の開示を望む場合、プロバイダに対し、発信者情報の開示を求める訴訟を提起することになります。

この訴訟で開示請求者の請求を認容する判決が出された場合には、当該判決の内容にしたがってプロバイダから開示請求者に対して発信者の情報が開示されることになります。

そして、開示請求者から、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用した発信者に対し、損害賠償請求その他の責任の追及が行われることになります。

※ 開示請求者がプロバイダに対して提起した発信者情報開示請求訴訟において、請求棄却判決が出され、当該判決が確定した場合には、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用した発信者の情報は開示されません。

※ プロバイダ責任制限法が改正され、改正法が令和4年10月1日から施行されていることから、開示請求者は、プロバイダに対する訴訟提起という方法とは別に、発信者情報開示命令の申立てという非訟手続を行うことができるようになりました(裁判所HP「11. 発信者情報開示命令申立て」参照)。

同意した場合

発信者情報の開示に同意した場合には、基本的に、プロバイダから開示請求者に対して発信者の情報が開示されることになります。

その後、開示請求者から、発信者に対し、損害賠償請求その他の責任の追及が行われる可能性があります。

損害賠償請求等の方法

では、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用した発信者が発信者情報開示に係る意見照会書に対して「拒否」または「同意」の回答をした後、開示請求者から当該発信者に対して損害賠償請求その他の責任の追及が行われる場合、具体的には、どのような流れで責任追及が行われるのでしょうか。

当事務所にご相談される方の中には、「すぐにでも民事訴訟が提起されてしまうのか。」といったご質問をされる方も少なくありません。

しかし、いきなり民事訴訟を提起される可能性は高くはありません。

実際、当事務所で回答書の作成等の対応を行ったケースでも、いきなり民事訴訟が提起されたことは、これまでにありません。

基本的には、開示請求者(の代理人弁護士)から、内容証明郵便等の形で、文書をもって損害賠償を請求されることになります。

示談の成立

内容証明郵便等の形で、文書をもって損害賠償を請求された後は、開示請求者との間で交渉を進めることになります。

そして、交渉の中で、開示請求者側から提案を受けた(または発信者側から提案して承諾を受けた)一定の条件の下で損害の賠償に応じることができる場合には、開示請求者に対してその意思を伝え、一定の金額を(和解金や賠償金などとして)支払うこととなります。

もっとも、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用に関連して開示請求者に対して、和解金や賠償金などとして一定の金額を支払う場合には、将来的に、賠償すべき金額などについての紛争が生じないよう、事前に、適切な内容で、開示請求者との間で合意書を取り交わすべきでしょう。

なお、「どのような金額であれば損害賠償に応じても良いのか。」や「どのような内容の合意書を締結すれば良いのか。」などの点が気になる方は、弁護士に相談されるのが良いでしょう。

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用者の中には、権利者の著作権を侵害する形で、複数のファイルをアップロードしてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。

ご自身が権利者の著作権を侵害する形で複数のファイルをBitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用してアップロードしてしまった可能性があるのであれば、過去の複数ファイルのアップロード行為に関して包括的な内容の合意書を締結することも1つの有効な解決手段となります。

開示請求に対応する弁護士費用相場【2024年追記】

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用を理由に発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合、弁護士に対応を依頼することを検討する方もいるかもしれません。

では、このような意見照会書への対応には、どの程度の弁護士費用が必要になるのでしょうか。

この弁護士費用は法律事務所や対応方針によって大きく異なるという印象です。

対応方針1(直接交渉)

対応方針として、意見照会書が届いた時点で、プロバイダに対する回答書の送付を行わず、開示請求者(権利者)と直接交渉を開始することが考えられます。

当事務所としては、特にBitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトの利用を理由として開示請求を受けた事例においては、この方法はあまりおすすめしてはいません。他方で、たしかに早期解決が可能というメリットはあると考えます。

この対応方針で進める場合、着手金が15万円から20万円程度報酬金も15万円から20万円程度となることが多いようです。

当事務所でも、ご依頼者様のご希望にあわせて、この対応方針を採用することもあります。

その場合、当事務所では、上記金額よりも相当程度低い金額にて対応しています。詳細については、こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。

対応方針2(プロバイダ経由)

また、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトに関して意見照会書が届いた時点で、まずはプロバイダに対する回答書の送付を試みることも考えられます。

当事務所としては、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトに関して意見照会書が届いた場合の対応としては、基本的には、この方針が望ましいと考えています。

この方針を採用する場合の弁護士費用としては、回答書の作成及び送付と、送付後に損害賠償請求を受けた場合の対応とを併せて、着手金が10万円から20万円報酬金が10万円から20万円となることが多い印象です。

当事務所では、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトに関して意見照会書が届いた事例について、過去に多くの対応経験を有し、対応工数を削減できることから、原則としては報酬金を頂戴せず、上記金額よりも相当程度低い金額にて対応しています。詳細については、こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。

複数の作品に関する開示請求【2024年追記】

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用している方の多くは、ひとつのトレントファイルだけではなく、複数ファイルをダウンロードしたことがあるのではないでしょうか。

当事務所で対応してきたケースでも、「今後も追加で別作品に関する発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまうのではないか。」と心配される方も多い印象です。

実際、複数の作品に関し、別の著作権者(制作会社)から発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまうケースは少なくありません。当事務所では、2社や3社から開示請求を受けたケースも多く対応しています。

この場合、一つの著作権者との間で包括的な和解を成立させたとしても、その和解の効力は別の著作権者が有する作品には及びません。

そのため、追加で当該別の著作権者との間でも和解交渉を行う必要があります。

複数の作品(複数のトレントファイル)をダウンロードした覚えがある方は、このような将来的な別著作権者からの開示請求の可能性も踏まえて対応方針を検討する必要があるでしょう。

たとえば、弁護士に対応を依頼するとしても、別の作品に関して追加で発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまった場合の追加の弁護士費用等を事前に確認しておく方が良いです。

いつまで開示請求を受ける可能性があるのか【2024年追記】

上記の複数作品に関する開示請求の可能性とも関連し、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを使用した過去のダウンロード行為(アップロード行為)に関して、「いつまで開示請求を受ける可能性があるのか」を気にされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一般的にインターネットサービスプロバイダのアクセスログ保存期間は3か月から6か月とされています。そのため、トレントファイルのアップロードから6か月が経過すれば、意見照会書が届く可能性がなくなるようにも思われます。

しかし、当事務所がこれまで対応してきた経験を踏まえると、実際には1年や2年を経過しても、トレントファイルのアップロードを理由とする開示請求を受けるケースも少なくはありません。

理由は明確ではありませんが、たとえば、著作権者が開示請求に先立ち、プロバイダに対してアクセスログの保存を要請し、プロバイダがこれに応じている可能性が考えられます。

このような可能性もあることから、特に長期間にわたってBitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用して「もう他の作品に関して開示請求を受けることはないだろう」と安易に考えてしまうのは危険かもしれません。

BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)【2024年追記】

ファイル共有ソフトを利用したトレントファイルのダウンロード/アップロードに関しては、「BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)」によって特定されるケースが増加しています。

このシステムは、実際のトレントファイルのダウンロード/アップロード時のログではなく、トレントファイルの存否を確認する通信(ハンドシェイク通信)の時のログを取得するという特徴がありました。

そして、この特徴に関わらずプロバイダ責任制限法の適用を認める裁判例(知財高裁令和5年3月27日・令和4年(ネ)第10089号など)のほかに、この特徴を理由に、プロバイダ責任制限法の適用を認めない裁判例も存在していました(東京地裁令和5年10月20日・令和5年(ワ)第70005号など)。

しかし、当事務所で確認したところ、この「BitTorrent監視システム(ビットトレント監視システム)」は一定の日を境にアップデートされているようであり、その後は上記特徴を理由に開示請求が認められない可能性は乏しくなったといえそうです。

ファイル共有ソフトの利用とパブリシティ権/肖像権【追記】

ファイル共有ソフトの利用については、近時、著作権侵害以外に、パブリシティ権侵害肖像権侵害を理由にした意見照会書が届く例も散見されるようになっています。

当事務所でも、このようなパブリシティ権侵害や肖像権侵害を理由とする意見照会書が届いた方からのご相談を数多く受けています。

ファイル共有ソフトを利用した共有ファイルのダウンロードに関し、上記の著作権侵害が認められる可能性は別にして、これらのパブリシティ権侵害や肖像権侵害については、権利侵害性が認められるか否かという点について、いくつか検討すべき事項があると考えます。

そのため、ファイル共有ソフトを利用したことによるパブリシティ権侵害や肖像権侵害を理由とする意見照会書が届いた場合には、直ちに開示に同意してしまうのではなく、一度、ご自身の行為がパブリシティ権侵害や肖像権侵害に該当している可能性を含め、弁護士に相談される方が良いと考えられます。

最後に

本記事では、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用した結果、「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた場合に、(i)どのような責任を負う可能性があるのか(ii)どのような対応が望ましいのかについてご説明しました。

BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用して著作権を侵害してしまった場合、多額の損害賠償請求を受ける可能性や、刑事処罰を受ける可能性がありますので、すぐに弁護士に相談して、早めに対応方針を決定しましょう。

当事務所でも、「発信者情報開示に係る意見照会書」を受け取った方に対する回答書の書き方のアドバイスや、示談交渉活動を行っておりますので、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にご相談ください。

※ 現在、当事務所では、BitTorrent(ビットトレント)などのファイル共有ソフトを利用して著作権を侵害してしまった人からのメールでのお問い合わせについて、土日祝日も受け付けております。発信者情報開示に係る意見照会書への回答等に悩まれている方はお気軽にご相談ください。

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