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逮捕から裁判・判決までの手続の流れを弁護士が解説

本記事では、被疑者が逮捕されてから裁判・判決に至るまでの手続の流れを弁護士がご説明します。

各手続で重要な点やご相談者様が疑問を抱きやすい事項にも触れながら詳しく解説していますので、是非参考にしてください。

手続の全体像

被疑者(犯人であると疑われている人)が逮捕されてから、裁判で判決が言い渡されるまでの大まかな流れは、以下の図のとおりです。

【図1】 逮捕~判決言渡しまでの流れ

最低限把握しておきたい重要なポイントは、以下のとおりです。

重要なポイント①

逮捕されてしまったご本人は、起訴される前は、被疑者として、最長23日間(勾留請求までの72時間+勾留20日間)の身体拘束を受ける可能性があります。

重要なポイント②

逮捕・勾留いずれの状態でも、弁護士は被疑者本人と面会することができます。他方、逮捕されてから勾留が決定するまでの間、通常は、ご家族の面会は認められません。

重要なポイント③

検察官は、逮捕・勾留中に行った捜査や取調べの結果を踏まえて、起訴する必要があると判断した場合には、被疑者を起訴します。

重要なポイント④

起訴前に勾留されていた被疑者は、起訴された後も身体拘束が続くのが通常です。この場合、起訴前の逮捕・勾留により最大23日間の身体拘束を受けた後、さらに引き続き刑事裁判で判決が出るまで身体を拘束され続けることになります。

重要なポイント⑤

刑事裁判の判決は、審理が終わってから数週間で言い渡されます。被告人が起訴された事実をすべて認めている場合には、刑事裁判の審理は1回で終わることが多いですが、被告人が起訴された事実を否認していたり、事案が複雑な場合などは、審理が複数回に渡り行われることもありますので、判決が出るまでの期間は事案によって異なります。

ここからは、逮捕から裁判までの各手続について、順に詳しく解説していきます。

逮捕

逮捕には、通常逮捕・緊急逮捕・現行犯逮捕の3 種類が存在します。

通常逮捕

通常逮捕とは、あらかじめ裁判所から発付された逮捕状に基づいて、捜査機関が被疑者を逮捕することをいいます。逮捕状は、捜査機関による逮捕について、裁判所が許可を与えたことが示された書面です。

具体例としては、「早朝に警察官が自宅に来て、逮捕状を示した上で被疑者を逮捕する」という場合が挙げられます。当然、警察から「明日の●時に逮捕しに行きます。」などといった連絡はありません。

現行犯逮捕(準現行犯逮捕)

現行犯逮捕」とは、犯人と犯行が明白な場合に行われる逮捕手続のことです。現行犯逮捕は、捜査機関以外の一般私人でも行うことができ、逮捕状も必要ありません。

また、一定の条件のもとで、明らかに罪を行い終わったばかりだと認められる者についても、現行犯逮捕と同様に逮捕状によらず逮捕することが可能です。これを「準現行犯逮捕」といいます。 例えば、盗撮をしている人の犯行を現認した駅員が捕まえる場合や、現に万引きをしている人を警察官が捕まえる場合が「現行犯逮捕」です。

緊急逮捕

緊急逮捕」とは、一定の重罪事件を行ったことが十分に疑われる被疑者について、逮捕状の発付を待っていては身柄を確保できなくなってしまったり、証拠を隠滅されてしまうような場合に、逮捕状がない状態で逮捕することをいいます。

ただし、現行犯逮捕とは異なり、捜査機関は被疑者を逮捕した後、直ちに裁判所へ逮捕状を請求しなければなりません

逮捕後48時間以内に検察官送致

警察は、逮捕後48時間以内に、事件と被疑者の身柄を検察庁に送致します。

この間、逮捕されてしまった被疑者本人とご家族は、通常、面会することはできません。他方、弁護士であれば被疑者本人と面会することが可能です

なお、警察はこの段階で被疑者の身体拘束を開放し、事件のみ検察官に送致することもあります。メディアが発信する報道等では、このような処理を「書類送検」と呼ぶこともあります。

警察官や検察官は、逮捕直後や送致直後に被疑者本人の弁解を聴き、その内容を書面に残して証拠とします。自白を強要されてしまったり、動揺して事実に反する供述をしてしまうことなどを避けるためにも、できるだけ早期に弁護士との面会を行い、取調べへの対応等について、弁護士から適切なアドバイスを受けることが重要です。

検察官による勾留請求

検察官が、逮捕に引き続き被疑者の身体拘束が必要であると判断した場合、検察官は裁判官に対して「勾留請求」を行います。

これを受けて、裁判官は、被疑者の勾留(逮捕に引き続く身体の拘束)をすべきか否か判断します。勾留すべきと判断した場合には、裁判官が勾留を許可します。

この段階では、弁護士は、検察官が勾留請求をしないよう、あるいは、裁判官が勾留を許可しないよう、意見書を提出するなどして働きかけます。

勾留は原則10日間(勾留延長は10日間以内)

勾留は、原則として10日間です。ただし、検察官が勾留の延長を請求し、それを裁判官が認めた場合、最大10日間の勾留延長が認められます。つまり、最大20日間の勾留が認められる場合があります。

勾留延長は、共犯者や事件関係者が複数人いる、あるいは、事件内容が複雑で捜査に時間がかかるなど、やむを得ない理由がある場合に限り認められます。もっとも、実際には、少なくない事案で勾留の延長が認められてしまっています。

なお、起訴される前の段階では、警察署内に設けられている留置施設で勾留されるのが一般的です。

勾留後の段階では、弁護士は、裁判官の決定に対して準抗告を行うなどして、違法な勾留や勾留延長がされないように働きかけます。

起訴・不起訴

検察官は、逮捕・勾留中に行った捜査や取調べの結果を踏まえて、被疑者を起訴する必要があるか否かを判断します。起訴する必要があると判断した場合には、被疑者を起訴します。

他方、「諸般の事情から、罰するほどではない」あるいは、「この人は罪を犯していない」などと検察官が判断した場合には、起訴しないことを決定します。これを「不起訴(処分)」といいます。

「不起訴(処分)」となった場合、被疑者は釈放されます。また、「不起訴(処分)」になると、「前科」もつきません。そのような点で、起訴になるか、不起訴になるかは、被疑者にとってもご家族の方にとっても重要な意味を持ちます。

検察官による起訴・不起訴の決定がなされるまでの限られた期間の中で、弁護士は、被害者との示談交渉や被害弁償、被疑者に有利となる証拠の収集等を行います。弁護士の具体的な活動は事案により異なりますが、上記のような活動が功を奏し、不起訴となり事案が終了するケースも多々あります。

当然ですが、検察官が起訴・不起訴の決定をするまで、被疑者ご本人やご家族の方が何もせず放置してしまうのは、最も避けるべき対応です。

起訴から約1か月後に刑事裁判が開始する

上述したとおり、起訴前に勾留されていた被疑者は、起訴された後も身体拘束が続くのが通常で、この場合、起訴前の逮捕・勾留により最大23日間(勾留請求までの72時間+勾留20日間)の身体拘束を受けた後、さらに引き続き刑事裁判で判決が出るまで身体を拘束され続けることになります。

起訴後も身体拘束が継続する場合、被告人は警察署内の留置施設から、拘置所等の施設に移送されるのが一般的です。

この段階では、弁護士は、裁判で被告人(起訴された後は、「被疑者」から「被告人」に呼び方が変わります。)の主張・立証を適切に行うための準備をしながら、必要に応じて保釈請求(被告人を釈放するよう求めること)を行います。

保釈請求

起訴後、被告人の身体拘束を継続する理由や必要性がなくなった場合に、裁判所に対して被告人を釈放するよう求めることを「保釈請求」といいます。

保釈請求を行うには、法的に意味のある事情を精査し、法的根拠や証拠を示した書面を裁判所に提出する必要があります。

保釈が認められた場合でも、裁判所に、保釈許可決定の際に定められた保釈金を納めなければ釈放されません。保釈金は、正確には「保釈保証金」といいます。

保釈保証金の金額は、被告人の収入状況等によって異なりますが、一般的には150万円~300万円程度になることが多いです。

保釈保証金は、保釈が許可される際に付された条件を遵守して過ごしていれば、裁判終了後に返還されますが、条件に反すると返還されません。

なお、保釈が認められ、保釈保証金を納付すれば、被告人の身体拘束は解かれますが、その時点で刑事裁判自体が終わるわけではありません。

刑事裁判(審理)

刑事裁判(審理)は、裁判所内の法廷で行われます。

被告人の主な役目は、検察官や弁護人、裁判官からの質問に答えることです。

その他、審理の中で証拠物の提出証人尋問等が行われます。

合計で何回裁判(審理)を行うのかは、事案によって異なります。

被告人が起訴された事実を否認していたり、事件関係者が多数、あるいは事案自体が複雑な事案などであったりする場合には、審理を2回以上行うこともあります。

他方、事件関係者が少なく、かつ、被告人も起訴された事実を全面的に認めているような事件であれば、通常、刑事裁判(審理)は一回で終了し、判決は後日言い渡されます。

なお、刑事裁判では、担当となった裁判官が、有罪・無罪の判断や、有罪の場合に刑罰をどの程度にするかを決めます。日本では、起訴処分を受けた場合の有罪率が「99.9%」と言われています。

判決の言渡し

刑事裁判(審理)が1回で終了する場合は、審理が終わってから数週間後に判決が言い渡されます。

上述のとおり、事案が複雑な場合などは、刑事裁判(審理)が複数回に渡り行われることもありますので、判決が出るまでの期間は事案によって異なります。

最後に

本記事では、被疑者が逮捕されてから裁判・判決に至るまでの手続の流れについてご説明しました。

当事務所は刑事弁護にも対応しております。ご家族の方が逮捕されてしまった、あるいはご自身が刑事事件を起こしてしまったなど、お悩みの方はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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