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公然わいせつ事件の刑事弁護|弁護士の役割や刑の相場についても解説

令和2年の犯罪白書によると、令和元年の公然わいせつ罪の認知件数は2569件、検挙件数は1770件であり、公然わいせつ罪が頻繁に発生している犯罪であることがわかります。

本記事では、公然わいせつとはどのような犯罪か、弁護士はどのような弁護活動をするのかについて弁護士がご説明します。また、刑の相場や逮捕されてからの手続の流れや解決のポイント等、ご相談者様が疑問に思われることの多い点についても説明していますので、是非最後までご覧ください。

公然わいせつとは?

公然わいせつとは、路上・公園・電車内等、不特定又は多数の人がいる、又はいる可能性のある場所で、自己の性器を露出したり、見せたりするなどのわいせつな行為をすることです。刑法第174条には、次のように規定されています。

(公然わいせつ)

第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法第174条

1)「公然」とは

「公然」とは、不特定又は多数人が認識しうる状態をいいます(最決昭32.5.22刑集11・5・1526)。公衆の面前であることが必ずしも要求されるわけではなく、また、現に不特定又は多数の人が認識したことも必要ではなく、認識できる「可能性」があれば足ります。

例えば、不特定又は多数の人が利用する可能性のある公園でわいせつな行為を行った場合、実際にその公園には人がいなかったとしても、誰かの目に触れる可能性さえあれば「公然と」わいせつな行為をしたことになります。

公然性が認められる場所の具体例として、以下のような場所が挙げられます。

  • 公園
  • 海水浴場
  • バスや電車の車内
  • 路上に駐車中の乗用車内
  • 飲食店内

もっとも、上記のような場所であれば「絶対に」公然性が認められるというわけではありません。例えば、飲食店内であっても他者から見られる可能性がないような状況であれば、公然性が否定されることはあり得ます。

2)「わいせつな行為」とは

刑法174条にいう「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」をいうものと解されています。

具体例として、以下のような行為が挙げられます。

  • 全裸で徘徊する行為
  • 自己の陰茎を露出する行為
  • 自己の陰茎を露出して手淫する行為
  • 性交または性交類似行為
  • ライブ配信サイトの映像配信システムを利用し、自己の陰部や自慰行為等の映像をインターネット上に即時配信して視聴者に閲覧させる行為

公然わいせつ罪の法定刑・刑事罰は?

条文に記載のとおり、公然わいせつ罪の法定刑は「6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

なお、「拘留」とは、刑務作業を伴わない形で、1日以上30日未満の期間、刑事施設において身体を拘束して自由を奪う刑罰です。

実際には、すべてのケースで刑事罰が科されるわけではなく、弁護活動の結果、「不起訴処分」となることや、執行猶予が付されることもあります。

公然わいせつ罪の刑の相場

どれくらいのことをすると、どれくらいの刑になるのだろうか、と気になる方もいらっしゃると思います。そこで、実際にあった裁判例をいくつかご紹介します。

1)実際にあった事例(裁判例)

裁判例①

男性(前科なし)が歩道上において自己の陰茎を露出した事例。

量刑:罰金15万円

裁判例②

男性(前科・前歴なし)が、海水浴場の砂浜に置かれたゴムボート上で、海水浴客らが容易に認識できる状態で女性と性交した事例。

量刑:罰金30万円

裁判例③

男性(公然わいせつ罪での前科あり)が、路上で自己の陰茎を露出した事例。

量刑:懲役3月、執行猶予2年

過去の裁判例を見ると、起訴されて罰金刑や懲役刑の判決が出ている事例の多くは、男性が陰茎を露出・手淫する姿を通行人に見せつけたり、男女が野外で性行為をしたりした事例です。

また、過去にも露出行為を繰り返しているような被告人については、刑事罰が重くなる傾向があります。

2)量刑に影響を与え得る事情

公然わいせつ罪に限った話ではありませんが、処分や量刑(刑罰の重さ)が決っせられるに当たっては、さまざまな事情が考慮されます。例えば、「初犯だから不起訴になる」あるいは「前科があるから懲役になる」というような単純なものではありません。

もっとも、初犯の方が刑が軽くなる傾向はあります。例えば、裁判官が量刑を決める際に考慮する事項として、以下のようなものが挙げられます。

前科・前歴、余罪の有無

例えば、公然わいせつ罪の前科が多く、同じことを繰り返してしまう傾向が見られる場合には、刑が重くなる傾向があります。

行為態様

例えば、児童に対して陰茎を露出して手淫を見せつける行為を長時間行うなど、行為態様がより悪質な場合には刑が重くなる傾向があります。

犯行の目的・動機

例えば、自己の性的興奮を得るために、周囲の者の意思に反して積極的に露出行為を行う、あるいは、営利の目的でわいせつ行為を見せつけるといったケースでは、刑が重くなる可能性があります。

公然わいせつで逮捕された後の流れ

もしもご家族の方が逮捕されてしまった場合、(これは事案が「公然わいせつ」であるか否かにかかわりませんが)逮捕から裁判までの流れは次のとおりです。

逮捕から判決言い渡しまでの流れ
【図1】 逮捕~判決言渡しまでの流れ

重要なポイント①

逮捕されてしまったご本人は、起訴される前は、被疑者として、最長23日間(勾留請求までの72時間+勾留20日間)の身体拘束を受ける可能性があります。

重要なポイント②

逮捕・勾留いずれの状態でも、弁護士は被疑者本人と面会することができます。他方、逮捕されてから勾留が決定するまでの間、通常は、ご家族の面会は認められません。

重要なポイント③

検察官は、逮捕・勾留中に行った捜査や取調べの結果を踏まえて、起訴する必要があると判断した場合には、被疑者を起訴します。

重要なポイント④

起訴前に勾留されていた被疑者は、起訴された後も身体拘束が続くのが通常です。この場合、起訴前の逮捕・勾留により最大23日間の身体拘束を受けた後、さらに引き続き身体拘束がされ、保釈がされない限り、刑事裁判で判決が出るまで身体を拘束され続けることになります。

重要なポイント⑤

刑事裁判の判決は、審理が終わってから数週間で言い渡されます。被告人が起訴された事実をすべて認めている場合には、刑事裁判の審理は1回で終わることが多いですが、被告人が起訴された事実を否認していたり、事案が複雑な場合などは、審理が複数回に渡り行われることもありますので、判決が出るまでの期間は事案によって異なります。

ご相談者様からご質問いただくことも多い「逮捕から裁判までの流れ」については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。

・逮捕から裁判・判決までの手続きの流れを弁護士が解説

公然わいせつの事案における弁護活動

被疑者・被告人のために弁護人が行う活動にはさまざまなものがあります。例えば、以下のような弁護活動を行います。

1)本人が罪を認めている場合

実質的な被害者との示談

前提として、公然わいせつ罪の規定が守ろうとしている利益(法益)は、「健全な性秩序ないし性的風俗という社会的な法益」であるとされています。つまり、特定個人の法益を守るものではなく、社会的な法益を守るものである、とするのが現在の判例・通説です。そうであるならば、公然わいせつの事案では「示談」をする相手方がいないようにも思えます。

しかし、実際に公然わいせつで検挙されるケースでは、わいせつ行為を見せられたことで実質的に被害を被った「被害者」がいることがあります。

そのようなケースでは、実質的な被害者の方と示談をすることで、不起訴処分など有利な結果を得られる可能性が高まります。

とはいえ、実質的に性的な被害を被った方は、行為者と直接示談交渉をすることを拒否するのが一般的です。したがって、示談交渉を行いたい場合は、早期に弁護士に依頼すべきです。

ご相談者様からご質問いただくことも多い「示談の意味や効果」については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。

示談すれば不起訴になる?示談の意味や効果について弁護士がわかりやすく解説

反省文や謝罪文の提出

公然わいせつ罪に限った話ではありませんが、行為者本人が反省を述べた書面や、実質的な被害者の方への謝罪文を作成することも重要です。

自身がどのような行為を行い、何がいけなかったのか、原因についてどう考え、今後どうのようにしていくのかという点について、一度自分自身でよく考えることは、同じ過ちを繰り返さないためには必要な作業といえます。

医師の診断を受ける

何度も公然わいせつ行為を繰り返してしまうなど、何らかの疾患が原因となって犯罪に及んでしまうと考えられる方は、専門の医療機関で問診を受け、必要に応じて治療をすることをおすすめします。

ご本人の意思で、今後同じことを繰り返さないために通院・治療を開始した場合には、そのことを示す書面を弁護人から検察官や裁判官に提出します。

2)本人が無罪を主張している場合

過去の裁判例を見ると、公然わいせつの事案については「無罪」と判断されている事例がいくつか存在します。有罪判決の件数と比較すると、無罪判決の件数は決して多くありませんが、無罪判決があることはたしかです。

例えば、「陰部の露出はしていない」「故意に露出したわけではない」など、ご本人が無罪を主張している場合には、弁護人は、その主張を裏付ける証拠を収集したり、検察側の立証が十分でないことを明らかにしたりするといった弁護活動を行います。

弁護人は、上記に例示した弁護活動の他にも、被疑者・被告人が身体拘束を受けている場合には釈放に向けた活動をするなど、さまざまな弁護活動を行います。

どのような事案であったしても、できる限り早期に弁護士にご相談いただいた方が、弁護活動の選択肢や準備にかけられる時間が増えるので、より良い結果が得られやすいでしょう。

最後に

本記事では、公然わいせつとはどのような犯罪か、弁護士はどのような弁護活動をするのかなどについてご説明しました。

当事務所では、公然わいせつ事案についても取り扱っておりますし、その他の刑事弁護にも対応しております。ご家族の方が公然わいせつの疑いで逮捕されてしまった、あるいはご自身が公然わいせつを疑われていて悩んでいるという方は、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にご相談ください。

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