近時、従業員や元従業員によるクチコミサイトへの口コミの投稿によって企業に悪影響が生じているケースが少なくありません。
本記事では、そのような従業員や元従業員による口コミの投稿の中でも特に「エン ライトハウス(en Lighthouse)」(旧カイシャの評判)における口コミを削除する方法について、ご説明いたします。
エン ライトハウス(旧カイシャの評判)の口コミの特徴
はじめに、エン ライトハウス(en Lighthouse)の口コミの特徴についてご説明します。すでにエン ライトハウスがどういったサイトかをご存知の方は、本項を読み飛ばしていただいても構いません。
エン ライトハウスはエン・ジャパン株式会社が運営するサイトであり、2020年6月1日に「カイシャの評判」から名称変更されました。
エン・ジャパン、国内最大級の年間5000万ユーザーが 利用する企業クチコミサイトをリニューアル 『en Lighthouse』(エン ライトハウス)が本日6月1日OPEN!
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1,400万件以上の社員・元社員による口コミを掲載しており、年間5000万ユーザーが利用しているとされています。
エン ライトハウスに掲載される口コミは、社員や元社員による口コミであることから、閲覧するユーザーから「真実である可能性が高い」と評価される傾向にあると考えられます。
また、エン ライトハウスに掲載される口コミに関しては、FacebookやTwitterに簡単に共有できる仕組みが用意されています。そのため、掲載された口コミがSNSで拡散される可能性が比較的高いでしょう。
したがって、仮にエン ライトハウスにおいて企業の名誉を毀損するような口コミが投稿されてしまった場合には、新卒採用や中途採用に大きな影響が生じてしまう可能性があります。
エン ライトハウスの口コミは削除できるか
エン ライトハウスの口コミは上記の特徴を有することから、会社に悪影響を及ぼす可能性がある口コミを発見した場合には、早期に削除のための手段を講じる必要があります。
しかし、エン ライトハウスの口コミには、削除が実現できる可能性が比較的高いものと、削除が困難と考えられるものとが存在します。
エン ライトハウスの利用規約や口コミ削除ガイドラインを参考にすると、たとえば次のような投稿は削除される可能性が高いことが分かります。
- 虚偽の事実に該当する場合
- 実体験に基づかない投稿の場合
- 個人情報の漏洩やプライバシーの侵害に該当する場合
- 誹謗中傷を含む場合
- 他者になりすます行為
削除を希望される口コミが、上記のいずれかに該当する場合には、当該口コミを削除できる可能性は十分にあるでしょう。
エン ライトハウスの口コミを削除する方法
エン ライトハウスにおける口コミについて、削除できる可能性がある場合には、実際に削除するための対応を行うことになります。
具体的な対応方法としては、次の2つが考えられます。
- 侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書を送付する。
- 仮処分命令を申し立てる。
以下、順にご説明します。
なお、エン ライトハウスの利用規約第4条では、次のような規定が定められています。
当社は、送信情報の関係者から、正当な権利に基づく主張・クレーム等を受けた場合、送信情報の投稿者に対する連絡の実施その他のプロバイダ責任制限法等の関係法令に基づいた対応を行なう場合があります。
「en Lighthouse」利用規約第6条第4項
この規定の存在から、エン ライトハウス上の悪質な口コミについては、適切に法的主張を行うことにより、任意に削除してもらえる可能性があることが伺えます。
侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書の送付
最初に考えられるのが、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が作成した「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」を書面で送付する方法です。
書面の送付先はエン ライトハウスを運営するエン・ジャパン株式会社になります。
書面に記載すべき事項は、概ね次の事項になります。
- 口コミが掲載されている場所
- 口コミの内容
- 侵害されたとする権利
- 権利が侵害されたとする理由
このうち重要なのは「権利が侵害されたとする理由」になります。
投稿を削除するためには、侵害された権利の性質を踏まえた上で適切な主張をすることが必要になることから、書面に書くべき内容や書き方に不安がある場合には、弁護士に相談するのが良いでしょう。
また、エン ライトハウスにおける口コミの削除を認めてもらう上で、通常は、権利が侵害されていることを示す資料等を「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」と併せて送付する必要があります。
どのような資料等を添付すれば良いか分からない場合にも、早期に弁護士に相談する方が良いでしょう。
削除の仮処分命令の申立て
侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書を送付しても削除が実現されないような場合には、仮処分手続として、エン ライトハウスを運営するエン・ジャパン株式会社を相手方として仮処分命令を申し立てることになります。
仮処分手続については、当然、当該手続に精通している弁護士に代理人として処理してもらう方が安全かつ効率的です。したがって、削除請求に詳しい弁護士に任せてしまうのが良いでしょう。
なお、仮処分手続に要する時間や費用については「【弁護士が解説】悪質な投稿を削除する方法と時間や費用について」でも記載しておりますので、こちらもご参照ください。
エン ライトハウスにおける悪質な口コミを抑止する方法
エン ライトハウスにおける従業員や元従業員による口コミを削除する方法については、上述のとおりです。
会社に悪影響を及ぼす可能性がある口コミを発見した場合には、本記事をご参照の上、早期に削除のための手段を講じましょう。
そして、可能であれば、将来的に同様の口コミがなされる事態を抑止する措置も同時に講じておく方が望ましいです。
エン ライトハウスにおいて従業員や元従業員による将来的な口コミを抑止する方法としては、問題となる口コミを行った投稿者を特定した上で、当該投稿者に対して警告を行うことが考えられます。
投稿者を特定する方法については「悪質な投稿を行う投稿者を特定する方法と費用は?」にてご説明しておりますので、こちらもご参照ください。
なお、エン ライトハウスでは、利用規約第7条第1項第3号において、次の場合に発信者情報の開示を行う可能性を明記しています。
権利者からの被害の申告及び立証が十分に行われ、当該権利者に対する重大な名誉棄損などの権利侵害行為が存在することが明白な場合であって、発信者情報の開示の必要性が認められる場合
「en Lighthouse」利用規約第7条第1項第3号
この規定の存在から、エン ライトハウスの口コミについては、権利者が被害の申告と立証を十分に行うことにより、仮処分手続を経ることなく発信者情報が任意に開示される可能性もあることが伺えます。
なお、同じ利用規約第7条の第2項は、次のような規定となっています。
当社は、権利者からの発信者情報の開示請求があった場合には、投稿者に対して、意見を聴取するものとし、投稿者は、2週間以内にこれに回答するものとします。当該期限内に回答がない場合、権利者の主張に対する特段の反論がないものとみなします。
「en Lighthouse」利用規約第7条第2項
この規定は、プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインの記載を受けたものであり、エン ライトハウス側から投稿者に発信者情報開示に係る意見照会書を送付した後、2週間以内に回答がなかった場合に、投稿者側の反論がなかったものとみなす規定です。
この規定からも、エン ライトハウスから発信者情報が任意に開示される余地があることが伺えます。
最後に
本記事では、エン ライトハウスにおける口コミを削除する方法や、削除の対象となりうる口コミなどについて説明しました。
上述のとおり、エン ライトハウスにおいて、企業の社会的評価を低下させるような口コミがなされた場合、それを放置すると、新卒採用や中途採用に大きな影響が生じてしまう可能性があります。
エン ライトハウスに対する口コミの削除依頼を行う際に本記事を参考にしていただければ幸いです。