当事務所は、インターネット上の記事や投稿の削除対応に注力しており、法人のお客様からも削除対応のご依頼をいただくことがあります。
そのような中で、従業員や元従業員による投稿の削除をご依頼いただくこともあります。
本記事では、従業員や元従業員による投稿の中でも「転職会議」における口コミの削除方法について、ご説明いたします。
転職会議とは
「転職会議」とは、300万件以上の転職口コミ情報を掲載するサイトであり、転職の際に参考にできる口コミを掲載しているサイトとしては、国内最大級のサイトと評価できるでしょう。
株式会社リブセンスが運営するサイトであり、その会員数は、本記事の執筆時点(2021年10月8日)において、700万人以上とされています。
口コミ登録企業数は188,087社になるとされています。また、毎日約2,000件の口コミがサイトに投稿されているようです。
転職会議の口コミの特徴
「転職会議」に掲載される口コミは「エン ライトハウス(en Lighthouse)」や「オープンワーク(OpenWork)」と同様に、社員や元社員によって投稿されています。そのため、閲覧するユーザーから「真実である可能性が高い」と評価される傾向にあると考えられます。
したがって、仮に「転職会議」において企業の名誉を毀損するような投稿がされてしまった場合には、新卒採用や中途採用に大きな影響が生じてしまう可能性があります。
「転職会議」における口コミは上記の特徴を有することから、会社にとって悪影響を及ぼす可能性がある口コミを発見した場合には、早期に削除のための手段を講じる必要性が高いです。
削除対象となる転職会議の口コミ
では、どのようなものであれば、削除することができるのでしょうか。
「転職会議」における口コミの削除を検討する場合には、株式会社リブセンスが公開している口コミ投稿ガイドライン(以下「削除ガイドライン」といいます。)を読むことが有益です。
削除ガイドラインを確認すると、概ね次のようなものが削除対象になることが分かります。
- 1) 個人が特定できる情報を含む投稿
- 2) 誹謗中傷を意図した投稿
- 3) 事実関係の確認が困難な投稿
- 4) 誇張した表現や、断定的な批判を含む投稿
- 5) 閲覧者が不快に思う投稿
削除ガイドラインには、実際にどのような口コミが削除対象となるのかについて、いくつかの例も示しています。たとえば、次のような口コミが削除対象になりうることが示されています。
社長と女性社員が不倫をしています。
噂なので定かではありませんが、新卒へのイジメはひどく、顔に青タンができるほどの暴力を受けていたそうです。
『勤務時間』という概念はそもそも存在せず、24時間365日を仕事に打ち込めるので素晴らしい職場です(笑)
これら以外にも、転職会議上で投稿された場合に削除対象となりうる口コミの例が掲載されていますので、一度確認するのが良いと考えます。
なお、削除ガイドラインには明記されていないものの、各種法令に違反する内容の口コミも削除の対象となることについては、株式会社リブセンスの有価証券報告書の内容からも分かります。
転職会議の口コミを削除する方法
「転職会議」における口コミについて、削除できる可能性がある場合には、実際に削除するための対応を行うことになります。
具体的な対応方法としては、次の2つが考えられます。
- サイト内の問い合わせフォームから削除を依頼する。
- 仮処分命令を申し立てる。
以下、順にご説明します。
問い合わせフォームからの削除依頼
「転職会議」における口コミの削除依頼は、基本的にはお問い合わせフォームから行うことになります。
※ なお、「転職会議」では「削除代行業者を名乗る者による違法性のある削除申請が横行している」として、企業又は当該企業の代理人弁護士以外からの削除申請であるか否かを転職会議事務局で常時調査を行っているようです。そして、「違法性のある削除申請であると判明した場合、然るべき対応を取るとともに、当サイトにその旨を掲載します。」とされています。
必要書類としては、次の2つが挙げられています。このうち1)は、お問い合わせフォームから連絡することで取得できます。
- 1)侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書
- 2)3ヶ月以内発行の印鑑登録証明書(※ 弁護士が代理する場合は不要)
転職会議の利用規約には、次のような場合に口コミの削除や公開範囲の変更等の措置を行う可能性を示す記載があります。
公的な機関または専門家(国、地方公共団体、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律のガイドラインに規定された信頼性確認団体、インターネット、ホットライン、弁護士等)から、投稿された情報について、違法性、公序良俗違反または他人の権利を侵害する等の指摘、意見表明があった場合
転職会議の利用規約第2章第3条第1号
この記載からは、弁護士等の専門家から口コミの削除依頼を行うことによって口コミが削除される余地があることが分かります。
削除の仮処分命令の申立て
「転職会議」を運営する株式会社リブセンスに対し「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」を送付しても削除が実現されないような場合には、仮処分手続として、株式会社リブセンスを相手方として仮処分命令を申し立てることになります。
仮処分手続については、当然、手続に精通している弁護士に代理人として処理してもらう方が安全かつ効率的ですので、削除請求に詳しい弁護士に任せてしまうのが良いでしょう。
なお、仮処分手続に要する時間や費用については「【弁護士が解説】悪質な投稿を削除する方法と時間や費用について」にてご説明しておりますので、こちらもご参照ください。
転職会議における悪質な口コミを抑止する方法
「転職会議」において、会社にとって悪影響を及ぼす可能性がある口コミを発見した場合には、早期に削除のための手段を講じる必要があります。
それに加え、投稿者によって転職会議上で同じような口コミが繰り返される事態を防ぐための措置も併せて講じておく方が望ましいです。
具体的な措置としては、投稿者を特定した上で、当該投稿者に対して警告を行うことが考えられます。
投稿者を特定する方法については「悪質な投稿を行う投稿者を特定する方法と費用は?」にてご説明しておりますので、こちらもご参照ください。
概要としては、まずは投稿者が投稿の際に使用したIPアドレスを特定した上で、インターネットプロバイダから特定の日時において当該IPアドレスを使用していた契約者の情報(氏名や住所等の情報)の開示を受けることにより、特定を行うことになります。
現行法令の下では二段階の手続を踏まえる必要があることから、投稿者の具体的な氏名や住所等の情報を取得するまでには一定期間を要することになる点には注意が必要です。
なお、「転職会議」に寄せられる口コミについては、システムによるチェックだけでなく、専任チームによる目視での全件確認が行われているとされています。そのため、投稿者による投稿のタイミングと掲載のタイミングにタイムラグが生じることになると考えられます。
実際に転職会議には次のような規定があり、こちらの規定からも、投稿者による口コミの投稿後にチェックが行われることが分かります。
弊社は、会員の書き込みまたは編集情報について、随時更新しますが、その回数および即時に反映することを保証するものではないものとします。
転職会議の利用規約第2章第2条第1項
弊社は、書き込みまたは編集情報について、弊社が本利用規約に違反している等、 本サービスへの掲載について不適格と判断した場合には、当該書き込みまたは編集情報の全部または一部を掲載しない、公開範囲を変更するおよび投稿者本人に修正を要請する等の対応をとるものとし、投稿者本人は当該対応に協力するものとします。
転職会議の利用規約第2章第2条第2項
したがって、悪質な口コミの掲載を発見した後、投稿者を特定するための手続をとるに当たっては、当該投稿者による口コミ投稿の際に記録されたアクセスログの保存期間が過ぎてしまう可能性(=アクセスログの不存在によって投稿者を特定できなくなる可能性)をより意識しなければならないでしょう。
「転職会議」における口コミに関して投稿者の特定を検討されている場合には、迅速に対応する必要性が特に高いと考えられます。迅速に対応を行い、アクセスログの保存を求める仮処分等も活用することで、投稿者を特定できる可能性が高まります。
最後に
本記事では「転職会議」における口コミを削除する方法や、削除の対象となりうる口コミなどについてご説明しました。
上述のとおり「転職会議」において、企業の社会的評価を低下させるような口コミがなされた場合、それを放置すると、新卒採用や中途採用に大きな影響が生じてしまう可能性があります。
「転職会議」に対する口コミの削除依頼を行う際に本記事を参考にしていただければ幸いです。
なお、当事務所では「転職会議」における口コミの削除も対応しておりますので、お困りの方はこちらのお問い合わせページから、お気軽にお問い合わせください。