News/Column

雑談たぬきでの誹謗中傷への対応方法(開示請求・削除)

雑談たぬきは、運営者によれば、V系以外の雑談をするためのたぬき掲示板です。

V系(ヴィジュアル系)に関する掲示板である「V系初代たぬき」から派生した掲示板という位置付けの掲示板です。

「ふわっち」や「ツイキャス」に関するスレッドが多く、若年層のユーザーに多く利用されている印象ですが、匿名性の高い掲示板であることから、誹謗中傷を行うなど、悪意のある投稿等がなされる例が散見されます。

本記事では、この雑談たぬきにおいて誹謗中傷を受けている方を対象に、雑談たぬきにおける書き込みを削除する方法誹謗中傷を行う投稿者を特定する方法について、記載します。

雑談たぬきにおける書き込みを削除する方法(概要)

雑談たぬき上で誹謗中傷を受けている人は少なくなく、Yahoo!知恵袋の「雑談たぬき 誹謗中傷」の検索結果においても、そのような人の存在が窺えます。

雑談たぬきにおいて誹謗中傷を受けた場合、まずは書き込みの削除を実現する方法を検討する必要があります。

雑談たぬきにおける書き込みを削除する方法は、大別すると次の2つです。

  • メールでの削除依頼
  • 仮処分命令の申立て

基本的な流れとしては、まずはメールでの削除依頼を行い、それでも削除されない場合には、仮処分命令を申し立てることになります。以下、順に検討します。

なお、将来的に誹謗中傷を行う投稿者の特定を予定されている場合には、書き込みの削除を実現するよりも先に、誹謗中傷が行われている状態をスクリーンショットの撮影等の方法によって証拠化しておくことが重要です(総務省特設サイト)。

将来的に裁判手続によって投稿者を特定することを見越している方は、書き込みの削除を試みる前の段階で、インターネットトラブルの解決に注力している弁護士に依頼し、証拠化の方法についてもアドバイスを受けておく方が望ましいと考えられます。

雑談たぬきの誹謗中傷に関するメールでの削除依頼

雑談たぬき上の「雑談たぬき掲示板利用のルール」の「問い合わせ窓口」において、削除依頼用のフォームが用意されています。

誹謗中傷を受けている場合、このフォームに必要事項を入力して削除依頼を行うことを検討すると良いでしょう。

なお、このフォームには、次のような記載があります。

削除依頼を簡潔にご説明ください。

問い合わせ窓口/削除依頼/一般

削除理由が適切に記載されていない場合には、管理人としても、書き込みを行う者の表現の自由に配慮し、削除依頼について慎重な対応をしているものと考えられます。

削除の根拠としては、例として、次のものが考えられます。

  • 名誉権侵害
  • 名誉感情侵害
  • プライバシー権侵害
  • 著作権侵害
  • 肖像権侵害

いずれを根拠にするとしても、削除理由としては、削除依頼の対象となる書き込みが、削除依頼者の権利を侵害していることを適切に主張する必要があります。

この点が明確になっていないと、削除依頼をしたとしても、雑談たぬきにおける書き込みの削除が実現されないという事態になってしまいます。

次のような方は一度弁護士に相談するのが良いでしょう。

  • 適切に削除理由を主張できているか不安な方
  • 雑談たぬきにおける書き込みに関して一度自身で削除依頼を行ったにもかかわらず対象の書き込みが削除されず困っている方

弁護士に相談することで、雑談たぬきにおける書き込みの早期削除が実現できる可能性があります。

フォームからの削除申請によって書き込みが削除されない場合

雑談たぬきにおける書き込みによって誹謗中傷を受けているにもかかわらず、フォームからの削除依頼によっては投稿が削除されない場合には、裁判所に仮処分命令を申し立てることになります。

メールでの削除依頼によって書き込みが削除されず、仮処分命令を申し立てる場合には、自分で対応するのは難しいことから、基本的には弁護士に依頼する方が良いでしょう。

仮処分命令を申し立てる場合の時間や費用については「【弁護士が解説】悪質な投稿を削除する方法と時間や費用について」もご参照ください。

開示請求によって将来的な誹謗中傷を抑止する方法

上記のような手段によって雑談たぬきにおける書き込みの削除に成功したとしても、同じような書き込みが繰り返されると困ります。

将来的な誹謗中傷の可能性も排除するためには、誹謗中傷を行った者を特定し、その者に将来的に悪質な書き込みを行わないことを確約させておくことが有用です。

当事務所の記事「悪質な投稿を行う投稿者を特定する方法と費用は?」でも記載しているとおり、匿名掲示板での投稿者を特定する場合、基本的な対応としては、次の2つのステップを踏むことになります。

  • 匿名掲示板の管理者に対し、アクセスログに含まれる投稿者のIPアドレスの開示を請求する(第1段階)。
  • 上記の請求の結果として得られたIPアドレスを管理するインターネットサービスプロバイダに対し、当該IPアドレスを割り当てた契約者(=投稿者)の氏名、住所等の開示を請求する(第2段階)。
特定の2ステップ

ただ、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます。)が令和3年に改正されたときに、発信者情報開示命令の申立ての制度が新設されました。

この制度を利用することにより、特に雑談たぬきに関しては、次のような流れで、上記2つのステップを並行して進められるようになりました。

  • 雑談たぬきの管理人に対し、アクセスログに含まれる投稿者のIPアドレスの開示を請求するとともに、当該IPアドレスを管理するインターネットサービスプロバイダの情報提供を請求する(第1段階)。
  • 上記開示請求を維持しつつ、上記情報提供請求の結果として得られたインターネットサービスプロバイダに対し、(雑談たぬきの管理者から当該インターネットサービスプロバイダに対して提供される)IPアドレスを割り当てていた契約者(=投稿者)の氏名、住所等の開示を請求する(第2段階)。

発信者情報開示命令申立ての制度が上手く機能するかは、コンテンツプロバイダの協力が不可欠になっているところ、雑談たぬきの管理者は、他サイトと比較した場合、かなり前向きに協力してくれる印象です。

そのため、雑談たぬきに関しては、改正プロバイダ責任制限法施行前よりも低いコストで裁判上の開示請求を進め、投稿者の特定を実現できる可能性があります。

雑談たぬきでの執拗な投稿に悩んでいる方は、削除だけでなく、開示請求によって投稿者を特定することを検討しても良いかもしれません。

当事務所でも、雑談たぬきの投稿に関して開示請求によって投稿者特定を実現した実績がありますので、当事務所へのご相談をご希望の方は、当事務所にお気軽にご相談ください。

開示請求によって投稿者を特定できる期間

上記のような流れで誹謗中傷を行う投稿者を特定することを希望する場合には、投稿者を特定できる期間が限られている点に留意する必要があります。

IPアドレスから契約者情報を特定するためには、インターネットサービスプロバイダが保有しているアクセスログ(通信記録)を参照する必要があります。

このアクセスログがインターネットサービスプロバイダによって削除されてしまった場合、雑談たぬきの管理人からIPアドレスの開示又は提供を受けることができたとしても、最終的に誹謗中傷を行った投稿者の氏名や住所等の情報を特定できません。

アクセスログは概ね3か月から6か月の間に削除されるため、雑談たぬき上で誹謗中傷を受けた場合には、可能な限り速やかにIPアドレスを特定するための措置を講じ、できれば3か月以内にIPアドレスの開示又は提供を受けられるように努めるべきです。

アクセスログ

投稿者を特定し、将来的な誹謗中傷を防止するとともに、投稿者に対して損害賠償請求等の形で責任を追及していくことを希望されている方は、早期に弁護士にご相談ください。

※ なお、誹謗中傷を受けた個人や法人を保護する観点から「インターネットサービスプロバイダに対してアクセスログの保存を義務付けるべき」との意見も少なくありません。しかし、発信者情報開示の在り方に関する研究会の「発信者情報開示の在り方に関する研究会 中間とりまとめ」でも言及されているとおり、プライバシー等を重視する既存の法制度の考え方との整合性の観点から、令和3年におけるプロバイダ責任制限法の改正においても、インターネットサービスプロバイダに対してアクセスログの一律での保存義務を課す形での改正は行われませんでした。

開示実現後の対応(損害賠償請求や刑事告訴)

上記でご説明したような方法によって投稿者を特定した場合、次に考えられるのは、①損害賠償の請求や、②刑事告訴の手続です。

損害賠償の請求

1つ目は、損害賠償の請求です。

内容証明郵便の送付等によって裁判外で損害の賠償を請求し、投稿者が応じない場合には、損害賠償請求訴訟を提起するという流れになるのが一般的です。

損害賠償請求との関係では、「どの程度の金額を損害として請求可能か。」というご質問を受けることも多いのですが、正直なところ、ケースバイケースであるため、一般的な相場観をお示しするのは非常に困難です。

自分が請求できる可能性のある損害の金額が気になる方は、投稿者特定前や特定後に、弁護士に確認されるのが良いでしょう。

また、「投稿者特定後に、投稿者に対して弁護士費用を請求できるのか。」という点につきましては、「開示請求の費用は相手に請求できるのか|弁護士費用等」に整理しましたので、ご参照いただけますと幸いです。

概要としては、「投稿者特定に要した弁護士費用の全額について、投稿者に対する請求を認めた裁判例も存在する。しかし、それが確定的な実務の運用とまではいえない。」ということになります。

とはいえ、最近でも、開示請求に要した弁護士費用全額について、投稿者に対する請求を認めた裁判例は複数存在しています。

インターネット上の電子掲示板に掲載された匿名の投稿によって名誉等を毀損された者としては、発信者情報の開示を得なければ、名誉等毀損の加害者を特定して損害賠償等の請求をすることができないのであるから、発信者情報開示請求訴訟の弁護士報酬は、その加害者に対して民事上の損害賠償請求をするために必要不可欠の費用であり、通常の損害賠償請求訴訟の弁護士費用とは異なり、特段の事情のない限り、その全額を名誉等毀損の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

東京高等裁判所令和2年1月23日・令和元年(ネ)第3668号、令和元年(ネ)第4142号

刑事告訴手続

2つ目が、刑事告訴の手続です。

損害賠償の請求が民事責任の追及であるとすれば、刑事告訴の手続は、刑事責任の追及です。

日本では、検察官が、国家の刑事訴追機関として公訴権を独占しています(検察庁|我が国の検察制度の特色)。

したがって、雑談たぬき上で誹謗中傷を受けたからといって、被害を受けた事業者が刑事訴訟を提起することはできません。

もっとも、告訴を行うことにより、捜査機関の捜査を促すことは可能です。

そこで、雑談たぬきで誹謗中傷を行った投稿者を特定できた場合、告訴状を作成し、当該投稿者を被告訴人とする刑事告訴を行うことが考えられます。

開示請求や削除請求に関する弁護士費用相場

本記事では、雑談たぬきにおいて誹謗中傷を受けた場合の対処方法を検討してきました。

雑談たぬき上の書き込みによって権利を侵害された場合、その削除や開示請求による投稿者特定は、必ずしも弁護士に依頼する必要があるものではありません。

しかし、裁判手続に関しては、弁護士に依頼することで適切な主張を行うことができ、投稿者特定や削除の実現の可能性を高めることができると考えられます。また、裁判手続の方法や法的主張の方法を一から調べるのは時間もかかってしまいます。

そこで、削除請求や投稿者特定を弁護士に依頼してしまうことが考えられます。

削除請求の弁護士費用相場

まず、削除請求について、裁判手続(削除仮処分命令申立事件)を弁護士に依頼した場合の料金体系は、どうなるでしょうか。

当事務所でインターネット上に公開されている料金体系を調査した限りでは、雑談たぬきの管理者を相手に削除仮処分命令の申立てを行って雑談たぬき上の投稿を削除するためには、着手金として15万円から25万円程度報酬金としても同額程度が必要になるといえそうです。

少なくない費用が必要になるため、弁護士に依頼する場合には、具体的に削除を希望する雑談たぬき上の書き込みの内容を弁護士に共有した上で、当該書き込みを削除できない可能性についても十分に確認した上で、意思決定を行う必要があるでしょう。

投稿者特定(開示請求)の弁護士費用相場

次に、雑談たぬき上で悪質な書き込みを行った投稿者を開示請求によって特定しようとする場合の弁護士費用はどの程度になるのでしょうか。

当事務所でインターネット上に公開されている料金体系を調査した限りでは、着手金として15万円から25万円程度報酬金としても同額程度が必要になるといえそうです。

こちらは、削除請求の場合と同様に投稿者の特定を希望する投稿の数によっても変動すると考えられます。また、特定を希望する雑談たぬき上の投稿数によっては、インターネットサービスプロバイダが複数になりうる関係で、改正プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示命令の申立てを行う場合であっても、追加費用が必要になる可能性があります。

こちらも少なくない費用が必要になるため、弁護士に依頼する場合には、具体的に投稿者の特定を希望する雑談たぬき上の投稿の内容を弁護士に共有した上で、投稿者を特定できない可能性についても十分に確認した上で、意思決定を行う必要があるでしょう。

最後に

本記事では、雑談たぬき上で誹謗中傷を受けた場合の対応方針について、書き込みを削除する方法や、開示請求手続によって誹謗中傷を行う投稿者を特定する方法について解説してきました。

雑談たぬきでは、画像を投稿する機能もあることから、画像が投稿されることによって肖像権や著作権が侵害されてしまうケースも散見されます。

本記事が雑談たぬき上で誹謗中傷を受けて悩まれている方の参考になれば幸いです。

なお、当事務所では、雑談たぬきの書き込みの削除対応や、誹謗中傷を行った者の特定の手続にも対応しておりますので、お困りの方は、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。

初回のご相談30分無料

※ こちらのページを見た旨をお知らせください

タイトルとURLをコピーしました