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グーグルマップでの誹謗中傷への対処方法(開示請求・削除)

これまで当事務所では、「Googleマップで根拠のない誹謗中傷を受けてしまった。」という方からのご相談を、事業者や個人の方から、多く受けてきました。

本記事では、このような当事務所の経験を踏まえ、Googleマップでの悪質な口コミに関する対処方法をご説明します。

Googleマップで誹謗中傷を受けてお困りの方の参考になれば幸いです。

なお、Googleマップの口コミに対処する適切な方法は、法改正やGoogle側の対応方針の変動により、日々変わっています。

これからGoogleマップでの誹謗中傷に対応しようとお考えの方は、最新の情報を確認する必要がある点にご注意ください。

Googleマップでの誹謗中傷の特徴

最初に、X(旧Twitter)その他のサイトと比較したGoogleマップでの誹謗中傷の特徴について、ご説明します。

Googleマップでは、事業者に対する誹謗中傷が多いというのが一番の特徴ではないかと考えます。

これまで当事務所に相談された方も、その多くが、法人の経営者としてビジネスを運営されている方や、個人事業主として店舗を営んでいる方です。

このような特徴に起因し、Googleマップにおける悪質な口コミに起因する損害は、精神的損害(無形損害)だけにとどまりません。

Googleマップでの悪質な投稿を放置すると、事業を継続していくことが難しくなるほどのダメージを負う可能性もあります。

近年では、Googleマップ上での上位表示を狙う「MEO」の重要性が高まっているとされており、中小企業庁運営の「ここからアプリ」などでも、その手法が紹介されています(ここからアプリ|無料で使える店舗集客ツール『Googleマイビジネス』の基礎知識など)。

このような状況下で、Googleマップでの検索結果に悪質な口コミが表示されてしまう事態は、可能な限り早期に解決すべきといえます。

Googleマップの口コミ投稿者特定の方法

それでは、Googleマップで悪質な口コミが投稿されてしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

まず、そのような口コミを投稿した投稿者を特定することが考えられます。

投稿者を特定した上で、損害賠償請求等にあわせて口コミの削除を求めるとともに、同じような投稿を禁止する流れになります。

後で記載するように、とりあえず削除の実現だけを優先して進めることも考えられます。しかし、根本的な解決を目指すという意味では、投稿者の特定から進める方が良いでしょう。

投稿者特定方法①|IPアドレスルート

Googleマップで誹謗中傷を行った投稿者を特定するための方法は、①IPアドレスを使用する方法と、②その他の投稿関連情報を使用する方法に分けられます。

ここからは、便宜上、前者を「IPアドレスルート」といい、後者を「非IPアドレスルート」といいます。

このうちIPアドレスルートは、Googleマップでの口コミ投稿に使用したIPアドレスを開示請求によって特定し、その後に当該IPアドレスを使用していた者の氏名及び住所を特定するという方法です。

IPアドレスの開示請求

IPアドレスルートの一段階目の手続であるIPアドレスの特定は、開示仮処分命令の申立てを行うか、開示命令の申立てを行うか、いずれかの方法で行う必要があります。

開示命令の申立ては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます。)が令和3年に改正されたときに新設された手続であり、比較的新しい方法です。

開示命令申立ての手続が新設された以上、どんな場合であっても当然後者を使用すべきであるようにも思われますが、そういうものでもありません。Googleマップでの誹謗中傷に対応したことのある弁護士であれば、いずれの手続を講じるのが良いのか、具体的な誹謗中傷の状況に応じて有益なアドバイスをすることができますので、弁護士にアドバイスを求めるのが良いでしょう。

契約者情報の開示請求

IPアドレスが特定できれば、当該IPアドレスを使用した投稿者の契約者情報(氏名及び住所など)の開示請求に移ります。

この二段階目の手続は、基本的に、プロバイダ責任制限法の令和3年改正によって新設された開示命令の申立てによって行うことになります。

令和3年改正前は訴訟を提起するしかなく、開示を実現するまでに半年程度の期間を要することも少なくありませんでした。しかし、この開示命令の申立てができるようになった結果、契約者情報の開示を実現するまでの期間が相当程度短縮されています。

なお、従来どおりの開示請求訴訟と、令和3年改正後の開示命令の申立てに関しては、その使い分けに関し、総務省は次のとおりの見解を公表しています。

発信者情報開示命令(第8条)は、開示請求事案には、開示要件の判断困難性や当事者対立性の高くない事案があることを踏まえ、こうした事案に係る裁判の審理を簡易迅速に行うことができるようにするため創設されたものです。したがって、このような事案においては、発信者情報開示命令の申立てを利用することが想定されます。

他方、事前にプロバイダから強く争う姿勢を示されたケースなど、裁判所が開示命令を発したとしても異議の訴えが提起され訴訟に移行するとあらかじめ見込まれるような事案については、開示請求をする者としては、開示命令の手続を選択するとかえって審理期間が長期化する可能性があることを考慮して、開示命令手続を選択せず、発信者情報開示請求訴訟を利用することが想定されます。

総務省|プロバイダ責任制限法Q&A|問23

二段階目の手続の結果、裁判所が開示相当と判断した場合、Googleマップの口コミ投稿者の特定が実現されます。

投稿者特定方法②|非IPアドレスルート

上記のとおり、Googleマップでの誹謗中傷を行った投稿者を特定する方法には、上記IPアドレスルートに加え、IPアドレスルートも存在します。

これは、プロバイダ責任制限法が令和3年に改正されたことによって格段に使いやすくなった方法です。

当事務所で確認したところ、この非IPアドレスルートに関して公開されている情報はまだ多くないようです。しかし、当事務所では、Googleマップでの投稿に関し、非IPアドレスルートで投稿者を特定した実績も少なからず有しています。

IPアドレスルートだけでなく、非IPアドレスルートでも開示請求を試みたいという方は、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。

投稿者特定後の対応(損害賠償請求や刑事告訴)

上記でご説明したような方法によって投稿者を特定した場合、次に考えられるのは、①損害賠償の請求や、②刑事告訴の手続です。以下順に見ていきます。

損害賠償の請求

1つ目は、損害賠償の請求です。

内容証明郵便の送付等によって裁判外で損害の賠償を請求し、投稿者が応じない場合には、損害賠償請求訴訟を提起するという流れになるのが一般的でしょう。

損害賠償請求との関係では、「どの程度の金額を損害として請求可能か。」というご質問を受けることも多いのですが、正直なところ、ケースバイケースであるため、一般的な相場観をお示しするのは非常に困難です。

自社が請求できる可能性のある損害の金額が気になる方は、投稿者特定前や特定後に、弁護士に確認されるのが良いでしょう。

また、「投稿者特定後に、投稿者に対して弁護士費用を請求できるのか。」という点につきましては、「開示請求の費用は相手に請求できるのか|弁護士費用等」に整理しましたので、ご参照いただけますと幸いです。

概要としては、「投稿者特定に要した弁護士費用の全額について、投稿者に対する請求を認めた裁判例も存在する。しかし、それが確定的な実務の運用とまではいえない。」ということになります。

とはいえ、最近でも、開示請求に要した弁護士費用全額について、投稿者に対する請求を認めた裁判例は複数存在しています。

インターネット上の電子掲示板に掲載された匿名の投稿によって名誉等を毀損された者としては、発信者情報の開示を得なければ、名誉等毀損の加害者を特定して損害賠償等の請求をすることができないのであるから、発信者情報開示請求訴訟の弁護士報酬は、その加害者に対して民事上の損害賠償請求をするために必要不可欠の費用であり、通常の損害賠償請求訴訟の弁護士費用とは異なり、特段の事情のない限り、その全額を名誉等毀損の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

東京高等裁判所令和2年1月23日・令和元年(ネ)第3668号、令和元年(ネ)第4142号

刑事告訴手続

2つ目が、刑事告訴の手続です。

損害賠償の請求は民事責任の追及ということになりますが、刑事告訴の手続は、刑事責任の追及です。

日本では、検察官が、国家の刑事訴追機関として公訴権を独占しています(検察庁|我が国の検察制度の特色)。

したがって、Googleマップで誹謗中傷を受けたからといって、被害を受けた事業者が刑事訴訟を提起することはできません。

もっとも、告訴を行うことにより、捜査機関の捜査を促すことは可能です。

そこで、Googleマップで誹謗中傷を行った投稿者を特定できた場合、告訴状を作成し、当該投稿者を被告訴人とする刑事告訴を行うことが考えられます。

Googleマップの口コミ削除の方法

ここまで、Googleマップで悪質な口コミを行った投稿者を特定する方法をご説明してきました。

では、悪質な口コミを削除するためには、どのような手段があるのでしょうか。

Googleマップでの悪質な口コミを削除する方法は、大きく分ければ、次の3つです。

  • Googleによる任意の削除を促す。
  • Googleを相手に裁判手続で削除を請求する。
  • 投稿者に削除を請求する。

Googleによる任意の削除を促す

1つ目の方法として、Googleによる任意の削除を促すことが考えられます。

この方法の詳細は、Googleが公開しているページから確認できます。

ただ、現実には、この方法で削除が実現できる投稿はそう多くはありません。また、Googleが「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」において「禁止および制限されているコンテンツ」として列挙しているコンテンツのみが削除の対象となりうる点に注意が必要です。

プロバイダ責任制限法の改正案が令和6年3月1日に国会に提出されました。この改正案では、法律名を「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」に変更することが予定されているほか、大規模プラットフォーム事業者に対し、削除に関する対応の迅速化が義務付けられる予定です(総務省「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案の概要」)。そのため、この改正案が施行されれば、任意での削除が実現される可能性が高まる(または任意での削除請求が認められるか否かの判断が早期に下される)かもしれません。

Googleに対する裁判手続で削除を請求する

2つ目の方法は、Googleを相手に削除仮処分命令の申立てを行うというものです。

人格権侵害を理由とした差止請求権を根拠として、裁判手続を行うことになります。

こちらの手続は、仮処分手続であることから、被保全権利の存在と保全の必要性を疎明する必要があります。

このような仮処分手続については、基本的には弁護士に依頼して手続を進めるのが良いでしょう。

口コミの内容によっては、人格権侵害以外の権利侵害を根拠とすることになります。

投稿者に対する削除請求

3つ目は、投稿者に対する削除請求です。

投稿者が既に特定できている場合には、この方法で投稿者に削除を請求することになります。

投稿者が任意交渉に応じない場合には、投稿者を相手として裁判手続を行う必要がある点には注意が必要です。

弁護士費用の相場

ここまで、Goolgeマップにおいて誹謗中傷を受けた場合の対処方法を検討してきました。

投稿者特定や口コミの削除請求は、法律上、弁護士に依頼することが求められているものではありません。

しかし、裁判手続に関しては、弁護士に依頼することで適切な主張を行うことができ、投稿者特定や削除の実現の可能性を高めることができると考えられます。また、裁判手続の方法や法的主張の方法を一から調べるのは時間もかかってしまいます。

そこで、投稿者特定や削除の手続を弁護士に依頼してしまうことが考えられます。

投稿者特定(開示請求)の弁護士費用相場

では、弁護士に依頼してGoogleマップで誹謗中傷を行う投稿者を特定しようとする場合、弁護士費用はどのぐらいかかるのでしょうか。

当事務所でインターネット上に公開されている料金体系を調査した限りでは、IPアドレスの特定に関し、着手金として20万円から30万円程度報酬金としても同額程度が必要になるといえそうです。また、IPアドレス特定後に契約者情報を特定するためにも、同程度の金額が必要になると考えられます。

少なくない費用が必要になるため、弁護士に依頼する場合には、投稿者を特定できない可能性についても十分に確認した上で、意思決定を行う必要があるでしょう。

削除請求の弁護士費用相場

削除請求についても、裁判手続を弁護士に依頼した場合の料金体系を調査しました。

当事務所でインターネット上に公開されている料金体系を調査した限りでは、Googleを相手に削除仮処分命令の申立てを行ってGoogleマップでの悪質な口コミを削除するためには、着手金として15万円から25万円程度報酬金としても同額程度が必要になるといえそうです。

こちらについても、少なくない費用が必要になるため、弁護士に依頼する場合には、口コミを削除できない可能性についても十分に確認した上で、意思決定を行う必要があるでしょう。

Googleマップでの誹謗中傷に関する当事務所での解決事例

当事務所にて取り扱ったGoogleマップでの誹謗中傷に関する解決事例の一例は次のとおりです。

なお、これ以外にも当事務所でGoogleマップでの誹謗中傷に関するに対応した事例は多くありますので、Googleマップでの誹謗中傷にお困りの方は、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。

ご依頼内容とご相談の経緯

Googleマップにおいて、運営するクリニックに紐づく形で、クリニック及びクリニック経営医師の社会的評価を下げてしまうような事実無根の口コミがありました。このような口コミの存在によってクリニックの経営にも支障が生じる恐れがありました。そこで、ご依頼者様としては、この口コミの投稿者を特定し、将来的に同様の投稿が行われる事態を阻止することを希望されていらっしゃいました。

当事務所における対応とその結果

ご依頼を受けた後、すみやかに開示請求の手続を開始しました。権利侵害性を丁寧に主張したところ、権利侵害の明白性が認められ、投稿者の電話番号等の開示を受けることができました。その後、被害の状況等を丁寧に説明することで、捜査機関に告訴状も受理してもらうことができました。

最後に

本記事では、当事務所の経験を踏まえ、Googleマップで誹謗中傷を受けてお困りの方に向けて、Googleマップの悪質な口コミに関する対処方法をご説明してきました。

本記事がGoogleマップ上の口コミによって誹謗中傷を受けて開示請求等をご検討の方の参考になれば、幸いです。

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