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オープンチャットで誹謗中傷を受けたら弁護士に依頼すべきか?

インターネット上での誹謗中傷を抑止する観点から、2022年3月8日の閣議で、侮辱罪の厳罰化などを盛り込んだ刑法の改正案が決定されました(毎日新聞「ネット中傷抑止狙い 侮辱罪の厳罰化を閣議決定 公訴時効も延長」)。

本記事では、インターネット上の名誉毀損その他の誹謗中傷の中でも、LINEのオープンチャットにおける誹謗中傷に焦点を当てて、誹謗中傷の被害に遭われた方がとることができる対応をご説明したいと思います。

LINEオープンチャットとは?

LINE株式会社は、2019年8月19日(月)に「LINEオープンチャット」というサービスをリリースしました。

LINEの友だちになっていなくても、共通の趣味などの共通点がある人とつながって、LINEの友だちのように、リアルタイムでのチャットが楽しめるサービスとなっています。

LINE株式会社が公開しているLINEオープンチャットの初心者ガイドでは、次のようなオープンチャットが作れるとされています。

  • 金融やIT、医療など、専門的な話をしたい人たちが集まってトークする、情報交換チャット
  • 地域のグルメ情報やお役立ち情報をシェアするご近所コミュニティ

2021年5月末時点でのLINEのオープンチャットの国内累計利用者数は約1500万ユーザーとなっており、LINEオープンチャットの公式ブログによれば、LINEのアクティブユーザーのうちの6人に1人以上がLINEオープンチャットを利用している計算になるようです。

※ 2020年8月31日時点のLINEオープンチャットの利用者数が約800万ユーザーであったとの公表もあり、2020年から2021年の1年でLINEオープンチャットのユーザー数は約2倍になったことが分かります。

LINEオープンチャットでの誹謗中傷について

このようなLINEオープンチャットでは、ユーザー数の増加に伴い、ユーザーが誹謗中傷の被害に遭うケースも生じてきているようです。

実際に、当事務所においても、LINEオープンチャットでの誹謗中傷の被害に遭われた方からのご相談を受ける例も増えてきました。

総務省が公開している「誹謗中傷等への対策状況 ヒアリングシート(2022 年3月7日)」によれば、LINE株式会社はLINEオープンチャットに関して次のような対策を講じているようですが、どうしても、誹謗中傷を完全に阻止することには限界があるでしょう。

  • 事前に設定した誹謗中傷関連のNGキーワードの自動非表示(当該チャットの管理者がNGキーワードを追加することも可能)
  • 安心安全ガイドライン(https://openchat-jp.line.me/other/guideline )を基本とした啓発活動の一環として、誹謗中傷や嫌がらせを禁止行為と明示し、ガイドラインページのフッターに厚労省の SNS 相談サイトや#NoHeartNoSNS 特設サイトへのリンクを掲載
  • ユーザが特定の検索ワードを入力した際に相談窓口へ誘導するバナーを表示

LINEオープンチャットで誹謗中傷を行う投稿者を特定できるか?

それでは、LINEのオープンチャット上で誹謗中傷の被害に遭ってしまった場合、投稿者を特定する余地はあるのでしょうか。

グループライン(グループトーク)と発信者情報開示請求権

LINE株式会社が提供するサービスの1つとして、グループライン(グループトーク)を挙げることができます。複数人とリアルタイムでのやり取りを行うことができる点でLINEオープンチャットと似ているサービスです。

このグループラインにおける投稿(メッセージ)については、いわゆる発信者情報開示請求権に基づいて投稿者を特定することは難しいと考えられます。

なぜなら、発信者情報開示請求権は、いわゆるプロバイダ責任制限法によって創設されたものであり、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に関する権利になっています(同法第2条)。

そして、グループラインにおける投稿は「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に該当せず、発信者情報開示請求権の対象から外れる可能性が高いと考えられるからです。

LINEオープンチャットと発信者情報開示請求権

これに対し、LINEオープンチャットは、そもそも不特定多数の人が参加(閲覧・受信)することを前提としたサービスになっています。LINEの友だちになっていない人どうしがリアルタイムで雑談することできる場を提供することを目的としたサービスとなっています。

したがって、LINEオープンチャットにおける投稿(メッセージ)に関しては、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に該当し、発信者情報開示請求権に基づいて、投稿者(メッセージ送信者)を特定できる可能性が十分あると考えられます。

※ LINEのオープンチャットの公開設定によっては、上記の点が妥当せず、オープンチャット上での投稿(メッセージ)に関して発信者情報開示請求の対象とならない可能性もある点には、念のためご注意ください。

投稿者特定のための具体的な手続について

LINEオープンチャット上で名誉毀損その他の誹謗中傷を受けた場合の投稿者の特定は、基本的には、①IPアドレスの開示請求と②契約者情報(氏名及び住所)の開示請求の2段階の手続で行います。

まずは、①についてですが、LINEオープンチャットを運営するLINE株式会社に対し、投稿者(メッセージ送信者)が問題の投稿(メッセージ)を行った際に利用したIPアドレスの開示を請求します。これは、発信者情報仮処分命令の申立てによって行います。

次に、②についてですが、LINEオープンチャットを運営するLINE株式会社から開示されたIPアドレスを管理しているインターネットサービスプロバイダ(KDDIやSoftBankなど)に対し、当該IPアドレスを使用していた投稿者(メッセージ送信者)の契約者情報(氏名及び住所)の開示を請求します。

この投稿者特定のための具体的な手続については「悪質な投稿を行う投稿者を特定する方法と費用は?」もご参照ください。

なお、インターネットサービスプロバイダは、「誰にいつどのようなIPアドレスを割り当てていたか」という情報(アクセスログ)を保存しているものの、この保存期間は短期間に限定されています。

したがって、LINEオープンチャット上で名誉毀損行為その他の誹謗中傷行為を行う投稿者(メッセージ送信者)を特定することを希望される方は、可能な限り早期に弁護士への相談その他の対応を行うことが望ましいと考えられます。

最後に

本記事では、インターネット上における誹謗中傷への対応の中でも特に、LINE株式会社の提供するLINEオープンチャット上での名誉毀損その他の誹謗中傷に関する対応についてご説明しました。

当事務所では、LINEオープンチャット上の誹謗中傷への対応の経験もありますので、LINEオープンチャットにおける誹謗中傷に悩まれている方で、本記事を読まれて誹謗中傷を行った投稿者(メッセージ送信者)の特定を検討または希望されている方は、こちらのお問い合わせフォームから、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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